coccio(コッチョ) - 受け継がれる伝統 - アクロス福岡
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受け継がれる伝統

coccio(コッチョ)

coccio(コッチョ)
▲イラスト・有馬沙里
 ▲coccio(コッチョ)

昭和30年代の民陶ブームの際に、福岡県を代表する伝統工芸品として広く知られるようになった小石原焼。指やカンナ、鉄片など普段の生活の中からその装飾法を生み出し、生活の知恵を生かした作風で現在もファンが多い。その小石原焼の3つの窯元とイタリアの建築デザイナーである城谷耕生(しろたにこうせい)氏、九州大学芸術工学研究院池田研究室のコラボレーションによって生まれたプロジェクトが「コッチョ」だ。大勢で囲む食卓の幸せを提案する食器シリーズが生まれた背景には、食生活の変化に合わせて食器も変わるべきだとする思いが見える。

「伝統的なスタイルの器だけでは、十分に現代の食生活に対応できないと考えたのが始まりです。食のスタイルも食べるものの形態も変わり、伝統的なものが若い人に受け入れられなくなってきた。その間口を広げるためにも、まずは小石原を知ってもらう導入になればとコッチョを作り出しました。実際に制作するにあたっては、今までのろくろとは全く違う技を必要とするので、技術的にもさまざまな工夫が必要でした。技術がない若い時代でもできなかったし、新しいことにチャレンジしづらくなる年齢になっていてもできなかったと思うので、ちょうどいいタイミングで着手できたのかもしれません。また、モノづくりの本質を知る城谷さんにディレクションしていただき、作り手のプロセスを学びたいという池田研究室の皆さんのアイデアも生かすことができたおかげで、より現代の生活に根差した “新しい民陶” のスタイルができあがったと思います」

そう話すのは3つの窯元の一つ、カネハ窯の3代目、熊谷(くまがえ)裕介さん。現在は少なくなったという半農半陶の生活を続ける40代の作り手だ。

「先代の技術や想いといったものを一度吸収し、自分の身体に通してから新しいものにチャレンジすると、小石原の魂を失わない作品が生まれると思う。まず間口を広げ、そこから興味を持っていただいた方に、トラディショナルな小石原の良さなどを伝えていけるといいですね」

(文・上田瑞穂)

  • カネハ窯
    朝倉郡東峰村小石原113
    TEL:0946-74-2203
    ※MUJIキャナルシティ博多(福岡市博多区住吉)でも販売。