博多おきあげ(押絵) - 受け継がれる伝統 - アクロス福岡
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受け継がれる伝統

博多おきあげ(押絵)

博多おきあげ(押絵)
▲イラスト・有馬沙里
 ▲博多おきあげ(押絵)

「私の母の時代には、おきあげはお茶やお華と同じように、花嫁修業の一つと捉えられていたんですよ」と語るのは、現在おきあげの伝承と普及を目指し、指導を続けている清水清子さん。羽子板や壁掛けなどに下絵を描き、布や綿を使い立体的に盛り上げる「押絵細工」のことを博多では「おきあげ」と呼ぶ。

「女性の教養の一つに数えられてきたおきあげですが、江戸時代には浮世絵師が下絵を描いた、当世の人気歌舞伎役者をモデルにしたプロの作品も。ブロマイド的な役割も果たしていたのでしょう。現在でも絵柄にはホークスのハリー君や、故西島伊三雄(いさお)先生(童画作家)の作品などさまざまなモチーフを使わせていただきますが、基本はやはり浮世絵ですね。やはり皆さん歌舞伎ものなどを好まれます」

そんな清水さんの作品は、どれもみずみずしいまでに生き生きとしており、女性の着物などは実に艶やか。それもそのはず、使用する布地は少量に見えるが端切れなどはもちろん使わず、京都の織元から直接反物を仕入れるという。

「博多織を使うこともありますね。生地の組み合わせ一つで印象がガラリと変わるので、配色と品質は重要なんです。また、一番難しいのは顔を描くこと。昔は『面相師(めんそうし)』と呼ばれる専門職があったくらいなので、こればかりは一朝一夕にはできません。現在数カ所でおきあげを教えていますが、顔だけはどうしても私が描くことが多いですね」

おきあげを作り始めて半世紀以上たったという清水さんだが、飽きたことは一度もないという。難しいからこそ、日々の修練にも気合が入る。

「昔は女の子が生まれると、災いをはねのけ健やかに育ってほしいという想いから羽子板を新春のお祝いに贈ったものです。お母さんやお婆ちゃんが、娘や孫のためにおきあげを手作りしてあげる習慣を復活させたいですね」

(文・上田瑞穂)

  • 博多おきあげ主宰 清水清子
    福岡市南区高宮1-3-32
    TEL:092-524-4477