蒲池焼 - 受け継がれる伝統 - アクロス福岡
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受け継がれる伝統

蒲池焼

蒲池焼
▲イラスト・有馬沙里 ▲利休形面取風炉

旧柳川藩の御用窯であったという蒲池焼。黒く上品に輝くその風合いは陶器とも磁器とも違う独特の優雅さを漂わせる。実はこちら、「土器」なのだ。

一切釉薬(うわぐすり)を用いず、椿の葉で丁寧に磨かれて完成する製法のため、「磨き土器」とも呼ばれる蒲池焼。上品な漆黒の色は、なんと煙を吸い込ませることで生まれるという。900度の低温で焼いたあと、窯を粘土で密封し、空気を入れずに不完全燃焼させる。すると、土器が煙を吸い込み、重厚な色合いが生まれるのだそう。

「温度計で計算して作るものではないから、経験則が全てですね」と語るのは、窯元の伊東征隆さん。明治期に廃窯となった蒲池焼に惹かれ、22年前にこの地に移り住み、復活させた。

「鉄分が多い粘土で作ると赤くなるなど、釉薬ではなく、土の質によって色が変わるのが土器の特質。煙の吸わせ方を工夫して一部だけ黒い斑紋を入れた『雲華焼(うんげやき)』というスタイルもあります。本来は偶然生まれたであろう模様を雲になぞらえるとは、先人たちも風流ですよね。」

その雅な質感に加えて、自己主張しすぎない落ち着きを持った姿は茶道具として重宝されている。土器は火に強いという特性を活かして、茶室で湯を沸かす道具「風炉」などに使われる。今では口コミで広がり、県内よりもむしろ京都や東京からの注文が多いという。

風雅風流を愛したと言われる柳川・立花藩の御用窯が、今も東西の都で愛されているというのは嬉しい。しかし一方で、この製法と伝統を受け継ぐ土器師は伊東さんただ一人となってしまった。

「せっかく復活したこの伝統文化を、後世にも伝えていきたいと最近強く感じるようになりました。一度途絶えたものを復活させるのは、文献を起こしたり、昔の作品から推量したりととにかく難しかった。私が直伝できるうちに、そろそろ後継者を見つけたいですね」

(文・上田瑞穂)

  • 蒲池窯
    福岡県柳川市西蒲池11-1
    TEL:0944-73-0527