英彦山がらがら 〜 筑豊の生活を守り続けた素朴な土鈴の音色 - 伝統の技 - アクロス福岡
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伝統の技

英彦山がらがら 〜 
筑豊の生活を守り続けた素朴な土鈴の音色

藁で5個1組に束ねられ完成
▲藁で5個1組に束ねられ完成
古くから修験道の山として知られる英彦山。その麓にある添田町では、「英彦山がらがら」と呼ばれる約800年の歴史を誇る土鈴が現在もつくられています。素焼きならではの乾いた素朴な音色が特徴の英彦山がらがらは、文武天皇が英彦山に奉納した鈴が由来とされています。戦乱の際に埋めたその鈴の複製を参拝者に分けたことで一般にも広まり、現在でも田畑の水口(みなくち、水の通り道)に埋める「水守り」、または家の玄関に魔除けとして置くなど、筑豊地域の人々の生活を守る存在として広く親しまれています。

英彦山がらがらの生産のピークは秋から12月頃までです。山を訪れる参拝の方々のお土産品として、昔は大量の土鈴を馬車に積んで最盛期は20店以上あった売店に運んでいたそうです。そしてそれをお守りとして買った農家の方々が、英彦山がらがらを腰に下げて持ち帰るという光景が、当時の地元の秋の風物詩だったそうです。

そんな郷土の鈴を、鈴類(すずるい)窯元の篠崎さんは50年以上もつくり続けています。代表的な土鈴は、ピンボールより一回り小さいサイズの「小がら」と呼ばれるものです。福岡県産のきめの細かい粘土を材料にして、熟練の手さばきで手早く丸め、切り込みを入れるなどして一日に約600個のペースでつくります。次に十分に乾燥させ、まとまった数になると薪窯で素焼きします。素朴な音色には、この窯での火の調節が重要であり、焼く温度が高過ぎると金属のような音になってしまいます。文字通り手間と時間をかけてつくられる土鈴は、ひとつひとつ音色が違います。その趣を楽しむというのも英彦山がらがらの大きな魅力です。一般的な小がらの土鈴は「太陽」を示す赤、そして「水」を示す青い色が塗られ、藁の紐を通して5個1組で束ねられて完成します。そのほか直径が最大で20センチ以上もある「大がら」や、英彦山にゆかりがある天狗やお多福、サルなどの形をしたユニークなものなど種類も多く、どれも手づくりならではの個性ある風情を楽しむことができます。

  • 問い合わせ先
    鈴類窯元
    住所:福岡県田川郡添田町大字落合1752 
    TEL:0947-85-0169
    ※見学は事前の連絡・予約が必要です。
「小がら」からひとつずつ手作業で型を抜く
▲「小がら」からひとつずつ手作業で型を抜く
型抜き後に成型
▲型抜き後に成型
乾燥させまとめて素焼をする
▲乾燥させまとめて素焼をする
色付け。赤は「太陽」、青は「水」を表す
▲色付け。赤は「太陽」、青は「水」を表す