博多張子 〜 祭りや祝い好きな博多の人々の日々を飾る、愛嬌溢れる存在 - 伝統の技 - アクロス福岡
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伝統の技

博多張子 〜 
祭りや祝い好きな博多の人々の日々を飾る、愛嬌溢れる存在

ひとつづつ丁寧に手描きで彩色しています
▲ひとつづつ丁寧に手描きで彩色しています
必勝の願掛けで知られている群馬県高崎市の「だるま」や、民芸品として売られている縁起物の「首振り虎」など、日本各地に存在する中身が空洞の人形。それらは総称して「張子」と呼ばれます。その起源は中国といわれており、日本には室町時代に伝来し、博多には商人や職人の交流を通じて江戸中期頃に入って来たと考えられています。その後に技術が確立した「博多張子」は、端午の節句に飾る張子の虎、大晦日の姫だるま、そして十日恵比須神社のだるま「福おこし」や福笹の鯛などとして、祭りや祝いが好きな博多の人々に長年親しまれている存在となっています。

明治以前から続く中尾家の工房を訪ねました。以前は博多区対馬小路(つましょうじ)に店を構えていましたが、太平洋戦争を機に郊外で博多張子をつくり続けています。製法は基本的に昔ながらの方法で、まず木や土、石膏製の型の上に八女の手漉き和紙を小さくちぎり、重ねながら糊で貼付けます。次に乾燥させ、和紙部分を切断して型を取り除きます。そして再び切断部分をニカワ(動物の皮や骨などから作られる接着剤)を使って接合し、強度を増すために牡蠣の貝殻が原料の「胡粉(ごふん)」とニカワ、水を混ぜたものを全体に塗ります。色付けもニカワと顔料を混ぜたものを使用しますが、色に影響するこの微細な調合、そしてひとつひとつ手描きで彩色するところに、職人の経験と技が活きると中尾さんは説明してくれました。特にだるまは髭、そして目の部分が顔の命です。最も難しく、それだけに技量が問われる部分です。

ひとつひとつの表情が違う味のある存在として、全てが人の手でつくられる博多張子。最盛期には、十日恵比須の時期などに、工房を埋めつくすほどの納品をした時期もありました。シンプルながら手間がかかる張子の生産は、現在では中国などの機械生産に押されています。「なかなか厳しいけれど、継いでくれる息子もいるしね。喜んでくれる人がいるから続けることができます」という中尾さんの言葉が印象的でした。

  • 問い合わせ先
    中尾俊雄商店
    住所:糸島市二丈深江1268 
    TEL:092-325-0241
    ※見学できます(事前に電話での連絡、予約が必要です。)
型を抜いたばかりの鯛の張子
▲型を抜いたばかりの鯛の張子
手前が胡粉、奥が5色の顔料
▲手前が胡粉、奥が5色の顔料
黒い方が型、白い方が型抜きし胡粉を塗った状態です
▲黒い方が型、白い方が型抜きし胡粉を塗った状態です
いろんな表情を持つ博多張子
▲いろんな表情を持つ博多張子