掛川(花ござ) 〜 い草の爽やかさが夏を告げる筑後の美しい風物詩 - 伝統の技 - アクロス福岡
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伝統の技

掛川(花ござ) 〜 
い草の爽やかさが夏を告げる筑後の美しい風物詩

丹誠込めて織った鮮やかな掛川
▲丹誠込めて織った鮮やかな掛川
筑後の豊かな大地と水で育ったい草。江戸時代以降、そのい草で生産され続けている手織りの敷物、そして現在は機械織りで生産されるカーペット類などを総称して、地元では「花ござ」といいます。い草の爽やかな香りと過ごし易い足触りが特徴であり、今でも筑後の夏の風物詩的な存在です。特に仏前用の手織りの敷物は色が鮮やかで味があり、「掛川(かけがわ)」という名前で知られています。掛川の名称の由来は諸説ありますが、本来は織り方の名称です。掛川はい草農家が多かった40年前までは、女性の内職として「ござばた」と呼ばれる手織機で織られていました。機械化の流れの中で掛川は貴重な存在となっており、現在でも深野さんと姉の松永さんの姉妹が福岡県の無形文化財の技術保持者として、手織りの技術と豊かさを伝え続けています。

今回は大木町の深野さんの仕事場を訪ねました。手織りの掛川では、縦糸としてヘラの木の甘皮を使用します。まず薄くした木の皮を干し、天井に吊るして専用の道具で梳(す)くことで適度な大きさにします。そして皮を縒(よ)り合わせ、長い糸の状態にします。糸の準備ができたら、次はいよいよ織の作業です。一世紀近く動いている足踏み動力の「ござばた」に縦糸を付け、菜種油を塗り、縦糸のわずか1センチにも満たない間隔の列に、い草の横糸を一本一本挟みながら織っていきます。足踏みの絶妙な力加減、そして20種類以上ある色の付いたい草から構成される複雑な模様や柄も、職人さんの頭の中にしかありません。全ての織り手が長年培った技術と経験、記憶によって作られる熟練の賜物です。全て手作業であるため、基本的に一度に一枚しか織れず、しかも相当の日数を費やします。「好きじゃないとね。イライラする日はしません。」と笑って語る深野さん。職人が丹精込めて織った鮮やかな模様と質感は、この土地ならではの確かな技と、豊かな心を感じさせてくれます。

  • 問い合わせ先・見学先
    福岡県花莚協同組合
    住所:三潴郡大木町大字八町牟田3 
    TEL:0944-32-1010
    見学や体験は不可。掛川の販売についてインフォメーションしています。
特殊な道具を使い、すばやく縦糸の間に横糸を通していく熟練の技
▲特殊な道具を使い、すばやく縦糸の間に横糸を通していく熟練の技
脚踏みの具合で目の詰まり方が変わる
▲脚踏みの具合で目の詰まり方が変わる
織り機の重要なポイント、ここで縦糸に横糸をはさみ、目つまりもここで調整
▲織り機の重要なポイント、ここで縦糸に横糸をはさみ、目つまりもここで調整
縦糸になる木の皮。手前に向かって工程を進めていく
▲縦糸になる木の皮。手前に向かって工程を進めていく
美しく染まったい草
▲美しく染まったい草