平川家住宅 ―うきは市― - ふくおか建物紀行 - アクロス福岡
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ふくおか建物紀行

平川家住宅 ―うきは市―

平川家
▲1 平川家

うきは市の耳納山地隈上川の川べりに位置する平川家は三本の棟(写真▲1)が印象的な民家である。江戸期1820年の記録が増築された仏間の襖下張から発見されているので主屋はそれより前に造られたことが分かっている。納屋は明治の半ばに造られた。

家は屋根が命と言われるほどその特徴が現れるが、コの字型のクド造り*1カヤ葺屋根は増改築を繰り返して生まれた歴史のリズムを感じる。切りそろえられた深い軒の陰影が力強く、カヤのふんわりとした質感と相まって実に美しいコントラストを描いている。長い時間をかけて当初の2倍近くの面積になりながら、外観デザインを見事に整わせる技は設計理念の高さをも示している。

内部に入るとそこは陰影礼賛の世界である。目がなれてくるとふすま絵(写真▲2)が知的な楽しさを誘う。さりげなく活けた花や仏壇の金箔(写真▲3)が畳に反射した光に浮かび、川のせせらぎと相まって幽玄の世界にいざなうようだ。ウチニワと呼ばれる土間の台所(写真▲4)は屋根の下地の竹とカヤが荒縄でしっかり結ばれている様子が見える。カマド(写真▲5)には茶釜や鉄鍋がすえられ当時の様子が分かる。行事がある時は今でもここでお湯を沸かしたりしていると御当主にお聞きした。

平川家を代表とする160棟を超す伝統家屋や棚田が有名な新川田篭重要伝統的建造物群保存地区は昨年7月9日に国の選定を受けた。地域をあげて保存修景活動を始めようとしていたわずか5日後の14日に九州北部豪雨で大きな被害を受けてしまった。現在、インフラ復旧工事を進めながら、被害家屋は復原工事が進められている段階だ。大きく傾いた家や崩れた堤防を横目に心配しながら訪ねたが、無被害でしっかり時を刻む平川家に感動を覚えた。

*1 クド造り・・・佐賀から筑後にかけて造られた民家の形式で棟をコの字型に造る。

写真・文|大森久司

  • 場所・お問い合わせ
    うきは市浮羽町田篭388-1
    うきは市教育委員会生涯学習課 
    TEL:0943-75-3343
    アクセス
    西鉄バス「浮羽発着場」より「コミニティセンター」行き乗車、 「美住」下車徒歩5分
    備考
    見学は要予約 *住居のため
ふすま絵
▲2 ふすま絵
さりげなく活けた花や仏壇の金箔
▲3 さりげなく活けた花や仏壇の金箔
ウチニワ
▲4 ウチニワ
カマド
▲5 カマド
軒下
▲6 軒下