#3 30年戦争 ♪リヒャルト・シュトラウス/オペラ《講和の日》 - アクロス福岡
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歴史を彩った名曲たち

#3 30年戦争 ♪リヒャルト・シュトラウス/オペラ《講和の日》

30年戦争

1618年、ボヘミアのプロテスタントがオーストリアに反旗を翻し、ボヘミア戦争が起こる。しかしオーストリアの軍隊の前にボヘミアはあっけなく敗北する。その後オーストリアがボヘミアのプロテスタントにたいして行った弾圧は凄絶で、国外追放や財産没収が徹底しておこなわれ、ドイツ語が公用語とされた。この戦争は近代のボヘミアの人々にとってきわめて大きな意味をもち、ドヴォルザークはこれを合唱曲《白山の後継者たち》で表現している。
この戦争が緒戦となって30年に及ぶ国際戦争に発展する。中部ドイツを主戦場としたこの戦争では、北ドイツから南ドイツ、オーストリアは略奪の限りを尽くされ、ボヘミアの人口は400万人から80万人に、南ドイツのアウグスブルクは8万人から1万8000人に減少した。そして1648年、ヴェストファーレン条約によって30年戦争は終結した。この講和条約を題材にしたのがカルデロンの戯曲『ブレダの解放』を原作とするリヒャルト・シュトラウス作曲のオペラ《講和の日》である。
1938年、ナチス・ドイツはドイツ人住民が多いチェコスロヴァキアのズデーテン地方の割譲を主張した。ナチスに歯止めをかけるべく、諸国はそのほかの領土要求をしないことを条件にミュンヘンでナチス・ドイツと講和条約を結んだ。これによってふたたびヨーロッパに平和が戻るという意味を込めて作曲されたのがこのオペラである。しかしその翌年、ドイツはポーランドになだれ込んで第2次世界大戦の火ぶたが切って落とされたのである。

R.シュトラウス
R.シュトラウス
西原稔 山形県生まれ。東京藝術大学大学院博士課程満期修了。現在、桐朋学園大学音楽学部教授。18、19世紀を主対象に音楽社会史や音楽思想史を専攻。「音楽家の社会史」、「シューマン 全ピアノ作品の研究 上・下」(ミュージック・ペン・クラブ賞受賞)、「クラシック 名曲を生んだ恋物語」、「クラシックでわかる世界史」などの著書などがある。