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伝えたい文化の魅力 NEO

#35 モビール作家 よしい いくえ

モビール作家 よしい いくえ

モビールとは、紙や薄いプラスチックなどで作られた軽い素材を糸などで吊るし、バランスをとり、風や空気の流れにのって揺れるさまを楽しむ作品のこと。皆さんも一度は目にされたことがあるのではないでしょうか。モビールの発祥とも言われる北欧の国では伝統工芸品として扱われ、日本でもインテリアや知育玩具として親しまれてきました。
私は今でこそモビール作家として活動させていただいていますが、もともと芸術肌というわけではなく、大学でも経済を学び、卒業後は関西の食品メーカーに勤めていました。ただ、雑貨屋さんで作家ものを見て回るのは好きで、休日にはよく雑貨店巡りをしていました。ある時、そんな風に立ち寄ったお店でたまたま目にしたのがモビール。シンプルだけど、じっと眺めてしまう不思議な魅力に心惹かれて、その商品の側に置かれていた作家さんの名刺を持って帰って、HPで検索し、ブログをちょこちょこと覗いていました。するとある日、そのブログに「忙しすぎるからだれか助けて」とアシスタント募集の告知が書かれていて。思わず連絡を取ると、意外にも近所に住んでいることがわかり、仕事を続けながら休みの日だけそこでお手伝いすることになりました。私にとって後に師匠となるこの人は、日本初のモビール作家・いろけん氏。この出会いが今の私を作る最初の「縁」でした。
1年間弟子入りさせてもらい、さまざまなことを学ばせていただいたタイミングで故郷・北九州に帰ることになったのが今から9年前のこと。久しぶりに北九州に戻ると今度はちょうどその時機に合わせるかのように、小倉・魚町にある古いビルをリノベーションしクリエイターの拠点づくりをする、というニュースに出合ったんです。自分自身としても作品作りを続けたいと思っていたので、まさに渡りに船。早速申し込み、オープン時の最初の入居者のひとりとなることができました。ここに入れたことが、私にとって第二の「縁」ですね。そうして作家としての活動が始まっていきました。それでもまだ仕事にするとまでは考えていなかったんです。プライベートで自信をなくすようなことが相次いだ時期だったこともあり、落ち込んだ気持ちを慰めるかのように作品を作る日もありました。「一日一モビ」と名付けて、毎日その日の気持ちを表現するモビールを作り続けました。SNSでも公開し、少しずつ見てくれる人が増えていくのが嬉しくて、励みにもなりましたね。日記を書くように、モビールで自分の気持ちを綴る…毎晩その日一日を振り返って作るのが日課のようになっていたころ、出版社の方が目に留めてくださったんです。「モビールでつづる365日」という本を出版させていただき、これがモビール作家として生きていく気持ちを固めた大きなきっかけとなりました。
私は主張しすぎる作品はあまり得意とせず、存在感が薄いくらいが自分らしいように思います。これからも、家事や仕事の合間にふと目に入ると気持ちが緩む、そんな日常のささやかな一部に寄り添えるようなモビールを作り続けたいと思っています。

(文・上田瑞穂)

プロフィール 1983年福岡県北九州市生まれ、在住。眺めていると、気持ちが緩んでくるようなモビールを制作。年に数回、各地の雑貨店やカフェなどで展示会を開催。著書に『モビールでつづる365日』(誠文堂新光社)がある。
オフィシャルサイト
オンラインストア「よしいいくえのモビールストア」