#21 株式会社サエキジャパン代表取締役 佐伯 岳大(さえき たかひろ) - アクロス福岡
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伝えたい文化の魅力 NEO

#21 株式会社サエキジャパン代表取締役 佐伯 岳大(さえき たかひろ)

株式会社サエキジャパン代表取締役 佐伯 岳大(さえき たかひろ)

実はいわゆる「一般企業」に就職したことがないんです。大学在学中に知り合った貿易会社の社長に見込まれて、下請けの小さな仕事を任されてやってみたら、アルバイトをするより楽しくて起業してしまいました。そのころから経営者の方々の集まる席によく顔を出すようになり、さまざまな話を聞かせていただいていました。ちょうどオリンピック招致や新空港設立の話があったころで、「若い世代が福岡の将来を考えなくてはいけない」なんて言われて、悩んだり。若いから何にでも興味があったし、得られる経験全てが有り難く、楽しかったですね。
結局オリンピック招致は東京に負け、新空港設立の話もなくなり、福岡に華やかなニュースがなくなったなと思っていたときに、ある企業の方からお誘いを受けたんです。「ドイツのクリスマスマーケットがすごいらしいから、一度視察に行ってみないか」と。
とにかく経験だ、という気持ちで参加したのですが、驚きましたね。想像していたものと何もかもが違った。当時の日本のクリスマスというとイルミネーションが主体で、「何万球」なんて規模を誇ることはあっても、みんな「ただの景色」として素通りしていました。しかし、日本より数倍寒いドイツでは、寒空の下でみんながホットワインを飲みながら肩を組んで語り合っているのです。冬の屋外での過ごし方が、全く違うのです。受動的な「見る楽しみ」ではなく、積極的に楽しんでいる様子に、この文化が日本にもあったらと思いました。冬の新たな風物詩を、福岡の街に創り出したいと思ったのです。
帰国して動き出し、最初に言われたのは「寒い冬の野外に、人は集まらないよ」という忠告。でも12月の博多って、ドイツに比べると随分暖かいんですよね。博多駅前はすでに素晴らしいイルミネーションがあったので、これを借景にして舞台を作れば、必ず人は集まると思いました。といっても、イベントを行うこと自体初めての経験だったので、ノウハウがあるわけではなく、ただ「あの欧州で見た世界観をこの街に作り出したい」という純粋な想いだけでしたが。冬は誰もイベントをしたがらないので、会場も空いていて難なく確保でき、意外にすんなりと第一回目を開催することができました。そして、驚いたことに一回目から大盛況だったのです。
最初は毎日のように会場に行きました。自分が手掛けたもので、こんなにも多くの人が喜んでくれるというのが嬉しくて。そしてどうしたらさらに喜んでくださるのかを日々考えるようになりました。欧州の雰囲気そのままを再現していた初回から、だんだんと博多らしさを加えたくなり、博多人形のサンタクロースを限定販売したりも。今年はアートフェアを同時開催して、クリスマスに絵を贈りあったり、オペラやクラシックの世界を楽しむなんていう新しいイベントを加えたいとも思っています。
おかげさまで規模・来場者ともに日本一となった今、さらに世界に冠するクリスマスマーケットに育てていきたいですね。

(文・上田瑞穂)

プロフィール 1981年生まれ。大学在学中の2001年に佐伯商事を創業し、2007年にサエキジャパンを設立。2013年には、クリスマスマーケット in 光の街・博多を初開催し、2014年に株式会社クリスマスマーケット設立。2015年には、TENJIN Christmas Market、クリスマスマーケットin大分、クリスマスマーケットin鹿児島を初開催した。